カテキン類の一種であるエピガロカテキンガレート(EGCg)が歯周病原性細菌E.corrodensのバイオフィルムを有効に抑制することを発見した。EGCgは本菌の増殖には影響せず、この効果は殺菌効果ではないことが示唆された。(特願2006-184392) また、本菌が対数増殖期の中期から後期にかけてオートインデュサー2(AI-2)を生産することを示した。AI-2の生産に必須なluxS遺伝子を欠損させた株を作成し、この欠損株では野性株に比べてバイオフィルム形成量が1.3倍に増加することがわかった。また、相補株では野生株と同程度のバイオフィルム形成量であった。これらの結果から、本菌においてAI-2を介したクオラムセンシング機構がバイオフィルム形成に影響を及ぼすことが示唆された。(J.Biosci.Bioeng.2006) さらに、本菌が菌体外に生産する可溶性物質が口腔上皮細胞の炎症性サイトカインIL-8や接着因子の発現を誘導することを明らかにした。これらの誘導はMAPキナーゼの経路を介して行われることも明らかにした。これらの結果より、本菌が歯周病の炎症応答の進行にも関与することが示唆された(Oral Microbiol.Immun.2007) また、本研究助成金にて購入した二次元電気泳動装置を用いたプロテオーム解析により、プラスミドの導入によって組換えが起こった株では、かなりグローバルなタンパク質発現の変化が起こっていることが示唆された。さらに、プラスミド導入株は口腔上皮細胞への付着能が増していることが、予備的な結果から示唆された。今後、これらの解析を続けて再現性を確認する予定である。
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