研究課題
基盤研究(C)
細菌による芳香族炭化水素の初期酸化に関与する芳香環二酸素添加酵素(ジオキシゲナーゼ)は、芳香環に水酸基を位置選択的かつ立体選択的に導入できることから、化学合成が困難な化合物の合成に利用することが可能である。本研究課題では、非天然基質である1-フェニルピラゾール(1PP)及びインダンに多数の変異型ビフェニルジオキシゲナーゼ(BphA)を網羅的に作用させて生成した化合物を検出、同定した。進化分子工学的手法によって既に構築されている20種類のキメラBphAのうち、7種は基質1PPに部位特異的に水酸基が導入されたモノヒドロキシ体ならびにジヒドロキシ体を野生型BphAよりも効率良く生成した。キメラ酵素BphA(2039)による触媒反応で生成した2種の生成物をHRMS分析ならびにNMRによる構造解析により同定した。すべてのキメラBphAによる1PPの変換において、同定された2種の生成物の比はキメラBphA毎に異なっており、特にBphA(2029)及びBphA(2030)はモノヒドロキシ体を多く生成した。さらに、ホモロジーモデリングによって構築したこれらのキメラBphAの立体構造と1PPとの複合体について分子動力学的計算に基づく分子シミュレーションを実施した結果、各々のキメラBphA間の1PPとの反応特異性の違いはBphAのキメラ化に伴う1PPの活性部位への結合様式の変化に起因することが示唆された。同様にして、別の基質インダンに変異型BphAを作用させ、反応生成物1-インダノールを光学異性体分離用カラムを用いたHPLCで分析した。その結果、多くの変異型BphAは、野生型BphAとは異なるエナンチオマー過剰率を与えることを明らかにした。以上のように、変異型BphAを使用することにより、コンビナトリアルな合成の素材となるような希少な芳香族モノヒドロキシ体およびジヒドロキシ体をより効率的に取得できることを実証した。
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http://www.chem.miyazaki-u.ac.jp/~yokoi/research/dioxygenase.htm