研究課題/領域番号 |
18580081
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
藤田 憲一 大阪市立大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (10285281)
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研究分担者 |
田中 俊雄 大阪市立大学, 大学院・理学研究院, 教授 (10137185)
臼杵 克之助 大阪市立大学, 大学院・理学研究院, 講師 (30244651)
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キーワード | 真菌 / Aspergillus nidulans / Candida albicans / 細胞骨格 / 微小管 / チュープリン / 抗真菌性抗生物質 / 二形性酵母 |
研究概要 |
L-2、5-dihydrophenylalanine(DHPA)は日和見感染の原因菌の一つであるアスペルギルス属の糸状菌に形態異常を伴う生育阻害作用を示し、その際、細胞骨格のうち微小管およびその単量体であるチューブリンの細胞内プールを減少させる。本研究は、この消失機構の解明を目的としている。DHPA処理したAspergillus nidulansでは、チューブリンタンパク量の減少とは逆に、全てのチューブリン遺伝子のmRNA量、すなわち発現量が増大していることが確かめられた。チューブリンのC末端における脱チロシン化によって、チューブリン分子自体が不安定化するとともに、膜と微小管の相互作用が断ち切られ細胞分裂が阻害されることが報告されているが、そのような脱チロシン化されたチューブリンも検出できなかった。加えて、タンパク質分解の際に出現するユビキチン化したチューブリンも検出できなかったが、チューブリンの分解産物と思われる断片の存在が確認された。ただし、その量はDHPA処理の有無にかかわらず一定であった。さらに、DHPA処理した菌糸から得られた無細胞抽出液におけるチューブリン分解活性の亢進も見いだせなかった。以上の結果より、DHPAは予想とは逆にチューブリン遺伝子の発現量を増大させることが判った。 本年度の研究では、日和見感染の原因菌である二形性酵母Candidaalbicansに対するDHPAの影響も検討した。まず、ヒトに感染する際に見られる形態である菌糸型細胞の誘導条件を設定した。DHPAは菌糸誘導条件下で本菌の生育を弱く阻害した。加えて、本物質は菌糸成長を抑制し、主として酵母体細胞を誘導することがわかった。さらに、酵母体の約半数は異常に膨潤した核を持ち、また明瞭なアクチンパッチの確認できない細胞も観察された。一方、DHPA処理によりアクチン、チューブリン、およびユビキチンの細胞内プールが減少していることもわかった。以上の結果より、DHPAのC.albicansへの作用はアスペルギルス属菌のそれとは異なる可能性が示唆された。
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