研究概要 |
Gluconobacter oxydans IFO 3244の細胞質画分より新黄色酵素と旧黄色酵素を精製し、両酵素とも結晶として得ることができた。旧黄色酵素がNADPHを酸化するNADPH脱水素酵素であるのに対し、新黄色酵素はNADHを酸化するNADH脱水素酵素であった。また、N末端解析によるアミノ酸配列を、最近利用可能となった酢酸菌のゲノムデータベースに照合した結果、NADPH脱水素酵素には旧黄色酵素様の配列が検出され、NADH脱水素酵素は非ヘム型ハロペルオキシダーゼのそれと高い相同性がみられた。NADPH脱水素酵素は基質としてNADPHに対してNADHの約2倍の酸化活性を示し、NADH脱水素酵素はNADHに対してNADPHの約3倍の酸化活性を示した。両酵素とも酸素を電子受容体として、NADPHおよびNADHを酸化することができた。酸素以外にもベンゾキノンや2,6-DCIPなどを電子受容体とすることができ、これら人工的な電子受容体に対して酸素よりも高い活性を示した。酸素に比べ2,6-DCIPを電子受容体とした場合、NADPH脱水素酵素は約56倍、NADH脱水素酵素は約140倍という高い活性を示した。反応の最適pHは各々5-6と7-8にあるなど酵素化学的性質の違いに加え、吸収スペクトルなどの理化学的性質でも両酵素は互いに対照的であった。両酵素の可視部域の吸収は基質であるNADHまたはNADPHの添加で還元され、通気をするともとの酸化状態へと復帰した。補酵素はNADPH脱水素酵素がFMN、NADH脱水素酵素がFADであった。分子量はNADH脱水素酵素が12万で、分子量3万のサブユニットの四量体であった。一方、NADPH脱水素酵素は分子量が5万で、サブユニットの分子量も5万であった。
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