アクチンとアクチン関連タンパク質により構成されるアクチンファミリーは、従来細胞質で機能すると考えられていたが、研究代表者らの研究により、一群のアクチン関連タンパク質が細胞核に局在しており、アクチンファミリーが細胞核やゲノムの機能にも深く関与することが明らかにされた。本研究では、ヒトの細胞核に局在するアクチン関連タンパク質であるhArp5をノックダウンしたところ、DNA修復能が低下することを見出した。hArp5は核内でクロマチンリモデリング酵素であるhIn080と相互作用しており、hIn080と強調して、ヒストンH2AXのリン酸化修飾に関与することも明らかにした。さらに、hArp5は細胞核と細胞質をシャトルするタンパク質であることを見出し、このシャトルがhArp5の機能制御に関与する可能性を示した。さらに、ヒトの細胞核に局在する別のアクチン関連タンパク質であるhArp8について、hArp8のノックダウンにより、細胞分裂期の染色体の分配に異常が高頻度で認められることを示した。hArp8はhArp5と同じくヒトのhIN080複合体の構成因子であるが、分裂期には、少なくともhArp5がこの複合体から解離していることも明らかにされた。また、出芽酵母のこれらのアクチン関連タンパク質のオルソログであるArp5、Arp8の破壊株のマイクロアレイ解析によって、これらの遺伝子が広く遺伝子発現の制御に関与することも明らかにした。
|