[1]Sulfolobus tokodaiiのPKORのX線結晶構造解析を行うために、アミノ酸配列を訂正した遺伝子発現系を作成し、酵素の単離精製を行った。この酵素は、以前の誤配列の発現系で作成したPKORや、天然のPKORと比べて特段の酵素学的際を示さなかった。この新しい発現系で得られた酵素の結晶化を行い、分解能3Åの反射を示す結晶の形成条件を見出した。旧来の結晶化条件では分解能数Åだったので、大きな進歩である。この解説データを、本酵素ファミリーで唯一構造解析が報告されているDesulfovibrioのPORをモデルとして分子置換法により解析しようと試みたが、解が得られなかった。そこで、セレノメチオニンを用いた異常分散法による解析を目指して、セレン置換体の発現・結晶化を行っている。 [2]Sulfolobus tokodaiiのPKORの活性中心残基の同定 蛍光性試薬NBDFが本PKORに共有結合して酵素を失活させること・この失活をCoAが競争的に阻害することは既知であったので、詳細な実験を行い、NBDFはbサブユニットに結合すること、このbサブユニットを単離してプロテアーゼ処理し、逆相HPLCで蛍光性のペプチドを単離し、配列を調べたところ、二つのペプチド(Lys125またはLys173のいずれかを含む)を得た。そこで、Lys125Ala、Lys173Alaの二つの変異体を作成して、野生型酵素と比較したところ、Lys125Alaでは、CoAに対するKmが大幅に増加していたので、Lys125がNBDFを結合する残基であり、CoAの結合に関与する、と結論した。 [3]本菌のゲノム解析から、PKOR以外に数種類のOFORがあることが推測される。そのうち、インドールピルビン酸:フェレドキシン酸化還元酵素(IOR、ヘテロダイマー酵素)と考えらら得る遺伝子の発現系を作成し、機能解析を目指したが、目的タンパク質の発現を確認できていない。
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