研究目的: 「寝たきり」や「ギプス固定」等により骨格筋を使わない状態が続くと、骨格筋量が減少し、その機能が低下する(廃用性筋萎縮/アトロフィー)。しかし、この廃用性筋萎縮の生じるメカニズムは不明である。本研究は骨格筋量の調節分子として、廃用性筋萎縮時に著しく変動する転写因子であるFOXO1および関連分子に着目し、骨格筋の萎縮・増量の分子機構の解明を目指し研究を行うものである。 結果および研究遂行状況 1、FOXO1遺伝子プロモーターの解析 筋萎縮時の骨格筋において誘導されるFOXO1遺伝子の転写調節機構をin vitro(培養細胞)およびin vivo(トランスジェニックマウス)の両面より解析を行っている。In vitroでC2C12筋肉細胞を用いて培養条件を検討し、FOXO1遺伝子発現が変動する条件を検索した。さらにin vivoで解析を行うため、FOXO1遺伝子-3kbのプロモーター領域を含むプラスミドを受精卵にインジェクションし、仮親の子宮に戻した。トランスジェニックマウスの誕生後、絶食あるいはギプス固定法によりマウスの筋萎縮を誘導し、骨格筋におけるレポーター活性を検討する。 2、FOXO1トランスジェニックマウスの筋萎縮表現型の解析 表現型解析の実験に必要な十分な数のマウスを確保した。そして、DNAマイクロアレイ法により、骨格筋における遺伝子発現プロフィールを網羅的に検討した。また、骨格筋を種々の免疫組織学的手法により解析した。さらに、運動能力、耐糖能、エネルギー消費量等を検討し、骨格筋の変化が全身の糖脂質代謝に及ぼす影響を検討した。現在、FOXO1マウスのインスリンシグナルを解析し、FOXO1マウスの骨格筋の細胞核内におけるFOXO1を含む転写複合体を同定する検討を行っている。また、骨格筋におけるFOXO1の標的遺伝子の同定とその発現調節について解析中である。
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