本研究では、植物ゲノム中に多数存在する三種類のオキシゲナーゼファミリー、シトクロムP450(P450/246遺伝子)、フラビンモノオキシゲナーゼ(FMO/36遺伝子)、2-オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ(20GD/120遺伝子)をターゲットとして、組換え酵素を網羅的に作成して酵素ライブラリーを構築し機能解析することを目的とした。 (1)植物P450とP450還元酵素の大腸菌を用いた共発現系の構築:P450の活性発現にはP450還元酵素によるNADPHからの電子伝達が必要であるが、大腸菌には還元酵素がない。そこで、P450をpCWoriに、還元酵素をpACYCにそれぞれ挿入し、2種のベクターを同時に大腸菌に導入することにより共発現させた。P450としてブラシノステロイド22位水酸化酵素であるCYP90B1およびアブシジン酸8'位水酸化酵素であるCYP707A3を用いた。共発現した大腸菌から膜を調製しin vitroで両酵素活性を検出することができた。またCYP707A3では、培地にABAを添加することによりin vivoでの代謝活性を検出することができた。このように、大腸菌を用いた植物P450の簡便な発現アッセイ系の構築に成功した。 (2)FMOおよび20GDの大腸菌による発現:FMOおよび20GDの全遺伝子の約70%を網羅する26および85遺伝子の全長ORFをクローニングした。これらORFをpETベクターに挿入し、大腸菌で可溶性となるよう発現条件を最適化し、N末にHistidine-tagを融合した組換え酵素を発現させアフィニティー精製した。 (3)At3g13610の解析:シロイヌナズナ根にはクマリン類であるスコポレチンの配糖体が多量に蓄積している。そこで、スコポレチン生合成関連酵素を探索するため、根で特異的に発現する20GDとしてAt3g13610の機能解析を行なった。本20GD遺伝子のT-DNA挿入変異株では根でのスコポレチン蓄積が抑制されていた。本20GDを大腸菌で発現させ酵素活性を調べた結果、フェルラ酸のCoAエステルを基質としてオルト位(6'位)を水酸化する活性を見いだした。以上の結果、At3g13610はFeruloyl-CoA6'-hydroxylaseであると同定した。
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