研究概要 |
本研究は,放線菌の産生する異常プリオン分解酵素(NAPase,E77)の機能解明および食の安全への適応について研究を行い,以下の2つの結果を得た。 1.NAPaseの化学修飾を行い,難分解性基質(ケラチン,異常プリオンタンパク質)に対する特異性の変化を解析した結果,塩基性アミノ酸の修飾により分解能や吸着能が低下することが明らかとなった。NAPaseの立体構造の情報をもとに部位特異的変異の導入を行い,それら変異体の難分解性基質に対する特異性の変化を解析した結果,異常プリオン分解酵素は,活性部位とは独立した難分解性タンパク質結合部位を有している可能性が示唆され,結合部位による分解能発現モデルを提唱した。今後は,異常プリオンタンパク質へのさらなる特異性の向上を目指し,遺伝子シャッフリングなどに代表される新規タンパク質工学、進化分子学工学的手法を用いて,酵素の改変を行うことを目標とする。 2.牛異常プリオンが羊にも感染しうることが明らかとなり,羊腸から作られているソーセージのケージングへのヒト感染型異常プリオン混入の可能性が示唆されている。異常プリオン感染ケージングの清浄化検討を行った結果,これらの酵素は異常プリオンを完全に分解する一方,ケージングのコラーゲン層までも分解してしまうことが明らかとなった。そこで,異常プリオン分解酵素を効果的かつ特異的に阻害する食品成分由来の異常プリオン分解酵素阻害剤のスクリーニングを行い,ニンニクおよびゴーヤ種子に新規な阻害剤を見出し,電気泳動的に単一になるまで精製を行った。今後は,それら阻害剤の構造を決定するとともに食肉の清浄化剤としての応用検討を行う予定である。
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