研究課題
基盤研究(C)
ハブ毒腺は出血因子や筋壊死因子等多くの生理活性成分を毒腺組織特異的に発現する。これまで毒腺組織特異的な発現機構に関する分子レベルでの研究は、毒腺培養細胞が存在せず定法での解析は困難なため、ほとんど進んでいない。そこで、本研究では、ハブ毒腺の転写・翻訳の分子機構を解明するのに、次のような実験を行った。1)毒腺組織で発現する遺伝子(産物)の網羅的解析:毒腺で発現する遺伝子(産物)を転写及び翻訳レベルで網羅的に解析し、その中から発現調節に関わる遺伝子を発見するために、毒腺のトランスクリプトミクス及びプロテオミクスを行った。前者については奄美大島ハブ毒腺から完全長cDNAライブラリーを作製して、約1万クローンについて配列解析を行い(進行中)、これまでにいくつかの新規な転写・翻訳に関わると思われる興味深い遺伝子を発見した。また後者については、ハブ毒は棲息地域(奄美大島、徳之島、沖縄)3島間でその組成が異なっていることがこれまでに示唆されていたため、3島のハブ粗毒各々について2次元電気泳動を行い、各スポットをESI-Q-TOF質量分析計を用いて同定を行った。この結果、各島のハブ毒腺に固有に発現する毒成分や未同定の成分の存在が明らかとなった。2)毒腺組織特異的転写因子の同定:毒腺組織特異的転写因子の同定を試みた。複数の毒成分遺伝子のプロモータ配列から候補配列を5カ所選出し、そのうちの一つは奄美大島ハブ毒腺抽出液と相互作用することを見いだした。この配列と結合するタンパク質の同定をESI-Q-TOF質量分析計を用いて解析している。その他、新規な毒腺アイソザイム及びそれらの阻害剤の分子進化学的知見並びに翻訳機構に関わる新規な分子等に関する研究成果も得た。
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