研究概要 |
本研究ではI型ポリケチド合成酵素(PKS)によって生合成されるversipelostatin(VST)のデオキシ糖生合成遺伝子に着目し、以下の結果を得た。まずは、デオキシ糖生合成の初期段階の反応を触媒するdTDP-D-glucose 4,6-dehydratase(DOH)をコードする遺伝子をPCRによって取得した。次に、VST生産菌、Streptomyces versipellis 4083-SVS6株のコスミドライブラリーを構築し、DOH遺伝子を含む約30 kbのコスミドクローンが取得した。塩基配列解析の結果、本コスミドには17個のORFが含まれ、かつα-D-glucose 1-phosphate thymidylyltransferaseとDOHをそれぞれコードすると予想される読み取り枠が隣接していることが確認できた。さらに、この読み取り枠にはどちらの遺伝子も全長が含まれることが明らかになった。しかしながら、コスミドクローン内にglycosyltransferase遺伝子は確認できず、また他のデオキシ糖生合成遺伝子も確認できていない。次いで、VST類縁体の単離精製・構造決定とそれらの生物活性評価を目的とした。4083-SVS6株の培養上清から、VST、およびその類縁体VST B-Eを得た。各種NMRスペクトルやHR FAB-MSスペクトルの解析に基づいて、これらの誘導体の構造を同定した。誘導体VST B-Eはいずれも新規化合物で、VSTと同じのアグリコン構造を持っており、それぞれのデオキシ糖部分の構造が異なっていた。次に、各誘導体のGRP78発現抑制活性を測定したところ、糖鎖部分のα-oleandrosyl-(1-4)-β-digitoxosylの存在がそれらの活性発現に非常に重要であることが示唆された。
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