研究概要 |
イネ培養細胞においては、キチンエリシター処理によりファイトアレキシン(モミラクトン類やファイトカサン類を主成分とする)の生産が誘導される。本研究は、イネの4番染色体に存在するモミラクトン類の生合成遺伝子クラスターの同調的発現制御機構の解明と、2番染色体におけるファイトカサン生合成遺伝子クラスターの存在の証明を目的とするものである。昨年度は、4番染色体上のクラスターに存在するOsKSL4の発現を制御する転写因子OsTGA1を同定したが、そのknockout体においてはOsKSL4だけでなくクラスター上の他の4種の遺伝子の発現も抑制されていた。本年度は、OsTGA1過剰発現体培養細胞を作製し、エリシター処理後のモミラクトンレベル、およびクラスターを構成する遺伝子の転写レベルを定量したところ、野生型に比べていずれも顕著に増加していることが示された。こうして、OsTGA1がクラスター上の5種の遺伝子の同調的発現に深く関与していることが示された。一方、2番染色体には、ファイトカサン類の生合成に関与するジテルペン環化酵素遺伝子2種の近傍に6種のP450遺伝子が存在している。そこで、これらのP450の機能解析を行うこととした。まず、相互に相同性が高いCYP71Z6/7の2種のP450についてRNAi法によるdouble knockdown体培養細胞の作製を試みたところ、CYP71Z6についてはもともと発現量が低いため発現抑制の効果は評価できなかったものの、CYP71Z7の発現抑制は確認できた。そこで、得られた形質転換体培養細胞について、ファイトカサン生産能を調べたところ、ファイトカサンA,B,Dなど2位に酸素官能基が導入されたファイトカサン類の生産が顕著に抑制されていることがわかった。こうして、CYP76Z7がファイトカサン類の2位水酸化酵素をコードしていることが強く示唆された。
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