研究概要 |
アルカロイド類は顕著な生理活性を示す化合物が数多く知られ,大変魅力的な化合物群である。本研究では様々な生理活性発現のメカニズム解明のために分子プローブの創製するために2,6-2置換ピペリジンアルカロイド類の効率的な合成法を確立することを目的とした。 1.2,6-trans-ピペリジンアルカロイドの合成:Spectamine Aのような2,6-trans-ピペリジンアルカロイドの合成は2,6-cis体よりは困難である。Pdによる2,6-trans-ピペリジン環形成反応の選択性はtrans:cis=5:2とまだまだ改善の余地がある。この課題を克服するために触媒のデザインが必須で立体障害の大きな配位子であるtri-tert-butyl phosphineなどを用いて反応を行ったが反応性が低かった。従って方針を変更し,嵩高いアリルエステルを調製し環化反応に供したところ収率が低いため保護基をCbmとして種々検討した結果Pd_2(dba)_3を用いて収率88%選択性79:21という結果を得た。 2.立体選択的なテトラヒドロピランの構築とバンレイシ科アセトゲニンのpyranicinの合成:Pyranicinは400を超えるアセトゲニン類の中でもわずか8種しかないTHP型アセトゲニンの一種である。本研究では2価のPdを用いた選択的なピペリジン環構築の知見を活かしてこの反応をテトラヒドロピランの立体選択的な構築に応用した。(-)-Muricatacinより数工程で得られるビフェニルエステルに対しCl_2Pd(CH_3CN)_2を用いて環化反応を行ったところ93:7の選択比で望む2,6-cis体のテトラヒドロピラン環を得た。これより数工程でpyranicinの全合成を達成した。また類縁体である10-deoxypyranicin,4,10-dideoxypyranicinの合成も行った。合成物に関してミトコンドリアcomplex I阻害活性試験を行ったところ対応するTHFアセトゲニンよりも活性がやや低下することが分かった。
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