1.メチルグリコシド糖供与体を用いた糖と糖のグリコシル化反応研究 マイクロ波照射によってメチルグリコシド体のアノマー位アセタール基におけるグリコシド結合が選択的に活性化される知見を基に、オリゴ糖合成への展開、生理活性物質への糖鎖修飾反応の検討などをすすめた。 2.低温下でマイクロ波照射したグリコシル化反応の検討 ルイスX誘導体合成においてグルコサミン3位に先にフコース誘導体を導入すると4位にガラクトースが導入されにくいことは既に報告されているが、低温下でマイクロ波照射すると本合成戦略でも高収率でかつ副産物の生成を抑えられることを明らかにした。この知見はマイクロ波の非加熱効果の存在を示唆している。 3.生理活性物質である様々な糖ペプチドの合成 糖ペプチドは多官能基化合物で、主に加熱手段として用いられているマイクロ波は糖ペプチド合成には不向きとされていたが、マイクロ波照射を活用してより簡便に糖ペプチド体が合成されうる基礎知見を得た。MUC1糖タンパクの繰り返し構造である、20残基ペプチドの5箇所にそれぞれ6糖体を持つ糖ペプチド体の合成に成功し、癌エピトープ部分の解明を指向した糖ペプチドフォーカストライブラリーの調製も行った。またp3ペプチド体を合成し、糖鎖認識構造研究をすすめた。これらの知見を生かして、マイクロ波利用糖ペプチド合成装置の開発に着手した。 4.固定化試薬の開発 化学反応のグリーン化を目指し重金属などの有害物質の環境への排出を防止すべく、重金属触媒を固定化した試薬の開発と、糖鎖連結反応などへの応用研究をすすめた。 5.その他 加水分解酵素による脱アセチル保護反応などの酵素反応におけるマイクロ波効果の他、関連して難溶性擬似糖脂質に対する酵素反応進行・促進を指向したシクロデキストリン添加効果研究をすすめた。また、マイクロ波照射が効果的な金ナノ粒子を担体とした合成研究も進めた。
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