1. 低栄養状態におけるロイシンの作用 ラットに無タンパク質食を1週間自由摂取させると後肢筋重量は減少したが、それに1.5%のロイシンを添加した食餌を与えると骨格筋量の減少は抑制された。このときの筋原線維タンパク質の分解速度を3-メチルヒスチジン放出速度から測定したところ、ロイシンの投与で有意に減少した。一方、重窒素ラベルフェニルアラニンの取込みから骨格筋タンパク質の合成速度を測定したところ、両者で変化は認められなかった。分解に関わる酵素系の発現や活性を測定したところ、ユビキチン-プロテアソーム系の活性やユビキチンリガーゼの発現の現象はなく、オートファジーの律速となるオートファゴソーム形成の調節タンパク質であるLC3-IからLC3-IIへの変換が抑制されたことを見いだした。これは、分解の抑制がオートファージー-リソソーム系で行われていることを示唆している。 2. 6時間ごとのロイシンの摂取が合成と分解に及ぼす影響 20%カゼイン食で飼育しているラットを18時間絶食させ、ロイシンを6時間ごとに2回67.5mg/100g体重ずつ経口投与した。3-メチルヒスチジンの放出速度から測定した分解速度は、投与1時間後から減少し6時間後まで減少が続き、2回目の投与でさらに減少した。合成の指標となるS6K1のリン酸化は投与1時間後だけ促進された。 以上の結果から、低栄養というストレス時において骨格筋タンパク質の増減は、合成よりむしろ分解で調節され、それを制御することで骨格筋の萎縮を抑制できることが明らかになった。
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