研究課題
これまで我々はビタミンK(K)の充足度の異なるモデル動物を作出し、各組織における遺伝子発現を網羅的に解析して、組織内におけるK類からメナキノン-4(MK-4)への変換の生理的意義の解明を試みてきた。その結果、Kが抗炎症作用を有すること、K欠乏時には精巣におけるテストステロン産生が減少することを明らかにしてきた。本研究では、抗炎症作用の分子機構の解明として、マウス由来RAW264細胞を用いて解析を行った。また、生体内でMK-4へと変換されないK1誘導体(ジヒドロフィロキノン)をラットに給餌した場合の影響について解析を行った。マウスマクロファージ様細胞をLPSで処理した際に誘導されるインターロイキン-1β(IL-1β)の発現をMK-4は有意に低下させた。また、IL-6,TNFαなど他の炎症性サイトカインのmRNA発現量も有意に低下させた。これらの発現低下には、MK-4の前処理が必要であることが明らかとなったことから、MK-4処理した細胞のコンディションメディウムを調製し、LPS誘導性炎症性サイトカインの発現に与える影響を観察したところ、コンディションメディウムに抗炎症活性の存在が示唆された。ジヒドロフィロキノンを給餌したラットの表現形を解析したところ、種々の血漿脂質・糖質代謝パラメーターに変化は見られなかったが、血漿低カルボキシル化オステオカルシンやアルカリホスファターゼ活性の有意な上昇が観察された。一方、酒石酸耐性酸ホスファターゼ活性や副甲状腺ホルモン濃度には変化が見られなかった。以上のことから、ジヒドロフィロキノン給餌によって骨中のMK-4含量が低下した場合、骨芽細胞の分化が促進し、その機能の亢進が示唆された。
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