研究概要 |
生体内で他のビタミンKから変換されるメナキノン-4(MK-4)の生理機能の解明、および、我々が見出したビタミンKによる抗炎症作用、テストステロン合成への関与について、その分子機構の解析を行い、次の知見を得た。1.動物の生体内でMK-4へと変換されない2',3'-ジヒドロフィロキノン(dK1)を無菌および通常ラットに給餌し、血液凝固不全を伴うビタミンK欠乏症を発症させることなく、肝臓以外の臓器でビタミンKを低下させたモデル動物を作出した。その表現形を解析したところ、骨形成マーカーである血漿オステオカルシン濃度がdK1給餌群で有意に上昇していた。一方、血漿カルシウムには変化が見られなかったことから、dK1給餌によって、骨の代謝回転が上昇したのではなく、骨芽細胞の分化が亢進していることが示唆された。2.ビタミンK欠乏時に見られる、テストステロン産生の低下が、直接的な精巣MK-4の低下に起因するか、否かについて、通常ラットにビタミンKを制限した食餌を与え、血液凝固不全などのビタミンK欠乏症を発症することなく、精巣のMK-4量を低下させたモデル動物を作製し、LPS投与後のテストステロン産生に及ぼす影響について解析を行った。その結果、LPS投与によるテストステロン産生の低下が、ビタミンKを制限した群において、より顕著に見られること、テストステロン合成の律速酵素であるCypllaのmRNA量、タンパク質量も有意に減少していたことから、精巣中のMK-4の低下により、炎症が促進したことに起因することが示唆された。3.マウス由来マクロファージ様細胞を用いて抗炎症作用の分子機構を解析した。LPS誘導のIL-1β,IL-6,TNFα mRNAをMK-4は有意に低下させた。この抑制効果の発現には、LPS刺激前に細胞をMK-4で前処理する必要があり、MK-4処理した細胞のコンディションメディウム中にも抑制活性が認められた。このことから、MK-4による抗炎症作用は、MK-4の代謝物やコンディションメディウム中に分泌される抗炎症物質によることが示唆された。
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