研究課題
基盤研究(C)
本年度は、心的ストレスに伴う免疫機能の変調におよぼす食餌性脂質構成脂肪酸組成の影響について検討した。マウスを「4匹/ケージ」の条件下で、オリーブ油、大豆油、もしくは魚油を15%(w/w)含んだ実験食を自由摂取させ3週間飼育した。その後、心的ストレスを与える目的で、マウスを「1匹/ケージ」の条件下(隔絶飼育)で、引き続き実験食を自由摂取させて2週間飼育した。コントロール群は、「4匹/ケージ」の条件下で5週間、実験食を自由摂取させて飼育した。オリーブ油もしくは大豆油摂取マウスで隔絶飼育によりリンパ球全脂質脂肪酸組成に占めるアラキドン酸(20:4n-6)およびドコサヘキサエン酸(22:6n-3;DHA)の割合が低下した。低下の程度はオリーブ油で著しかった。オリーブ油摂取マウスでは、隔絶飼育により、リンパ球増殖能の低下、リンパ球のインターフェロン(IFN)-γおよびインターロイキン(IL)-10産生量の低下、IL-4産生量の促進が確認された。各食用油群とも隔絶飼育によりIL-6産生量が低下したが、低下の程度はオリーブ油摂取マウスで最も大きかった。オリーブ油摂取マウスでは、隔絶飼育によりストレスタンパク質であるHeat shock protein 70 mRNA発現量の増加が確認された。また、オリーブ油もしくは大豆油摂取マウスで、隔絶飼育により脾臓のプロテアソームサブユニットmRNA発現量が増加した。増加の程度はオリーブ油摂取マウスの方が大きかった。オリーブ油摂取マウスでは隔絶飼育によりコルチコステロンの抗増殖効果に対するリンパ球の感受性が増加した。一方、魚油摂取マウスではコルチコステロンの抗増殖効果に対するリンパ球の感受性が隔絶飼育によりむしろ低下した。以上の結果は、オレイン酸の過剰摂取もしくはn-6系やn-3系高度不飽和脂肪酸の低摂取が心的ストレス下でのリンパ球免疫機能の変調の原因になることを示している。本研究により免疫機能におよぼす心的ストレスの影響が食餌性脂質構成脂肪酸組成により変調することを初めて明らかにした。
すべて 2007
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Biosci. Biotechnol. Biochem. 71
ページ: 174-182