研究概要 |
1.DHAやEPAを特徴的に含む魚油の過剰摂取は,生体内脂質過酸化を促進させる。また心的ストレスによる生体内脂質過酸化の促進も近年,確認されている。これらの事実から,魚油の摂取と心的ストレスの組合せが生体内脂質過酸化をより促進させ,生体組織に悪影響をおよぼすことが懸念された。しかし予想に反して,この組合せは,心的ストレスを受けずに魚油を摂取した場合と比べて,生体内脂質過酸化の促進を軽減した。この現象は,心的ストレスに対する魚油の有益な影響と関連していることが示唆された。 2.心的ストレスによる宿主の感染抵抗力の低下に対する食用油の改善効果について検討した。心的ストレスは,オリーブ油を摂取したマウスの病原真菌Paracoccidioidesbrasiliensisに対する感染抵抗力を,感染初期から中期にかけて低下させた。一方,大豆油を摂取したマウスでは,心的ストレスに伴う感染抵抗力の低下は生じなかった。また,心的ストレスは,オリーブ油摂取マウスで、淡症性サイトカインであるIL-6とP.brasiliensis感染症に対する主要な抗菌因子であるIFN-Yの肝臓での産生量を感染初期に低下させた。一方,大豆油摂取マウスでは,心的ストレスにともなう肝臓中のIL-6とIFN-Y産生量の変動は生じなかった。IFN-Y産生が,心的ストレス下での宿主の感染抵抗力に関連していることが示唆された。
|