本研究では、血管内皮細胞中のカテキンの標的分子を同定することにより、カテキンによる血管内皮細胞拡張作用の分子機構を解明することを目的とする。マウス血管内皮細胞由来培養細胞株であるbEnd3細胞で、eNOSが発現していることを、ウェスタンブロッティング法で確認した。また、bEnd3細胞では、カルシウムイオノフォア刺激によってNO産生が起こることが文献的に知られているが、これも追試により確認した。当初、bEnd3細胞でカテキン刺激応答としてのNO産生が認められていたが、その応答にはばらつきがあり、なかなか再現性のよい結果が得られなかった。そこで、カテキン刺激条件の至適化を試みたが、応答のばらつきという傾向は変わらなかった。結局、bEnd3細胞の使用を断念し、文献的に同様のNO産生能をもつことがわかっているヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を材料として用いることにした。現在、HUVECにおける、カテキン刺激によるNO産生系の至適化を行っている。一方、in vivoにおけるカテキンの作用が、刺激後比較的早い段階で認められたことから、翻訳後修飾レベルでの蛋白質変化も予想される。受容体候補分子がカテキン刺激によって翻訳後修飾に変化を起こし、二次元電気泳動上でスポットのシフトとなって検出されることが期待される。そこで、カテキン投与マウスとコントロールマウスの脳抽出液のタンパク質発現プロファイルを2次元電気泳動で解析した。現段階ではまだ明確なスポットのシフトは得られていないが、今後ターゲット・プロテオミクスの手法を用いることによって検出を試みる予定である。
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