脂質過酸化二次反応に対するビタミンEの作用機構を解明することを目的に、ビタミンEと脂質過酸化二次生成物である4-オキソ-2-ノネナール(ONE)あるいは4-ヒドロキシ-2-ノネナール(HNE)を反応させ、反応生成物の分離と構造解析を行なった。まず、ONEあるいはHNEとα-トコフェロール(α-TH)をアセトニトリルに溶かし酸触媒を加えて反応させたところ、反応はほとんど進行せず、α-THはこれらのアルデヒドを捕捉できないことが明らかとなった。一方、これまでに活性窒素分子種を捕捉することが知られているγ-THをONEとアセトニトリル中で酸触媒を加えて反応させたところ、HPLC分析によって反応生成物と思われる化合物ピークが検出された。そこで、反応生成物ピークを分取RPLCによって分離し、その構造を機器分析によって検討した。その結果、γ-THとONEの反応生成物として、γ-THの5位にONEの1位アルデヒド基が結合したγ-TH-ONE付加体の構造を決定した。一方、γ-THとHNEとの反応はONEとの場合に比べると遅く、反応生成物をLC-MS分析したところ、マススペクトルからγ-THとHNEの付加体と思われる化合物ピークが認められた。しかし、この化合物ピークは複数の化合物を含んでいると考えられ、構造の確定は今後の課題である。以上の本研究から、脂質過酸化二次生成物はα-THによって捕捉されることはなく、活性窒素分子種捕捉能を有するγ-THによって効果的に捕捉されることが示された。すなわちγ-THは、不飽和アルデヒドを捕捉して付加体である5-アルデヒド-γ-THを生成するものと推定し、γ-THの新たな生理的役割の可能性が示唆された。
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