研究概要 |
脂質過酸化二次生成物であるα,β-不飽和アルデヒドに対するビタミンEの役割を解明することを目的に、ビタミンE同族体であるα-、γ-およびδ-トコフェロール(TH)とα,β-不飽和アルデヒドの4-ヒドロキシ-2-ノネナール(HNE)や4-オキソ-2-ノネナール(ONE)との反応性を検討した。その結果、γ-THはONEと高い反応性を示したので、生成物を分離してその構造を調べた。γ-THとONEをアセトニトリルに溶かして塩酸存在下37℃で反応させ、HPLC分析すると、生成物としてピーク1〜3が検出された。ピーク1〜3は分離してその化学構造をNMRで解析し、化合物1はγ-THのC-5位にONE分子が結合した5-(1-(furan-2-y1)penty1-γ-TH、化合物2はγ-THのC-5位と6位水酸基にONEのC-4位とC-5位がそれぞれ結合した付加体、生成物3は化合物2のONE部位にもう1分子のONEが結合した付加体であることをそれぞれ明らかにした。そのうち、化合物1は反応初期あるいは低濃度の酸触媒存在下に主要生成物として認められたことから、γ-THによるONE捕捉の初発生成物であると推定した。さらにδ-THとONEとの反応においても、γ-THの場合と同様の捕捉反応生成物が認められた。 以上の本研究から、ビタミンE同族体のうち活性窒素分子種のような求電子試薬に対して捕捉能を有するγ-THやδ-THは、α,β-不飽和アルデヒドを効果的に捕捉できることが示された。すなわち、γ-THやδ-THは不飽和アルデヒドを捕捉して付加体を形成することによって、脂質過酸化二次生成物による細胞傷害を防御する可能性が示唆された。
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