研究概要 |
腸管粘膜表面を構成する一層の上皮細胞は栄養素の吸収と生体防御にとって重要である。これらの機能を十全に発揮するためには古くなった細胞は速やかに除去され新しい細胞に置き換わる必要があるが(腸管上皮の細胞代謝)、そのメカニズムはよくわかっていない。本研究では腸管に多量に発現している膜結合性セリンプロテアーゼmembrane-type serine proteasel (MT-SPl)(別名matriptase)およびグランザイムA (granzyme A, GrA)という2つのセリンプロテアーゼが腸管上皮細胞のアポトーシスを誘導するという仮説をたて、それについて検証した。MT-SP1は上皮細胞自身で、GrAは腸管上皮層に常在する上皮細胞間リンパ球で産生されている。1.酵母Pichia pastorisを用いて生産した組換え型GrAがラット小腸上皮由来のIEC-6細胞を培養皿から脱離させることを明らかにした。しかしながら、GrAがアポトーシスを誘導するという証拠は得られなかった。2.組換え型GrAがヒト肺胞上皮由来のA549細胞から炎症メディエーターであるインターロイキン6や8の放出促進や脱離を誘導することを明らかにした。この作用が食品由来の硫酸化多糖で抑制されることを明らかにした。3.MT-SP1/matriptaseがIEC-6のアポトーシスを誘導するかを検討する目的で上述の酵母を宿主として組換え型MT-SPl/matriptaseの生産を行った。平成20年度に天然型と同等のプロテアーゼ活性を持つ組換え型リコンビナントMT-SP1/matriptaseの触媒ドメインの大量調製に成功した(論文投稿中)。このリコンビナント体がIEC-6のアポトーシスを誘導するかどうかについては今後の重要な検討課題である。
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