研究概要 |
ポリフェノールはその抗酸化性を中心に生物活性の検討が進められているが,抗酸化性と表裏をなす性質として酸化を受けやすく,この性質の寄与を考慮しながらポリフェノールのタンパク質との複合体形成過程の解明を行なうことが本研究め目的である.本年度は特に両者の接近から可溶状態での複合体形成に至る初期過程と,反応の後期において高分子の複合体を形成して凝集に至る過程とに着目し検討を進めた.初期過程に関しては,NMRにおいてNOESYスペクトル上でのポリフェノール側の交差ピークの符号の反転,およびポリフェノール側の各シグナルのT1の顕著な変化が観察され,これらはポリフェノールとタンパク質との間で可溶性の会合状態を形成している明瞭な根拠となり,CDスペクトルとともに有用な情報を与えることを認めた.またポリフェノールの酸化条件化での挙動については,カテキンの加熱時の変化について検討を進め,ガンビリイン型2量体の形成を認めた.この反応は,このタイプのポリフェノールが縮合し,より高分子の物質へと変化する過程のモデルとしての意義を持つ.他方,加水分解性タンニンの水溶液中での変化についても検討し,酸化よりも加水分解がむしろ先行する傾向をも認めた. さらに,ポリフェノールのタンパク質との高分子複合体形成〜沈殿形成過程におけるポリフェノール側の構造的要因についても検討を進め,加水分解性タンニンについてこれを構成する各アシル基による分子のフレキシビリティーおよび疎水性が大きな要因となることを認めた.ポリフェノールの生体分子との結合性を基礎とした生物活性についても検討を進め,各種細菌類に対する作用について,ポリフェノール側のこれら構造的要因との関連付けが可能であることを認めた.
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