研究概要 |
MRSAやVREなど抗生物質や消毒薬に対する耐性菌が出現し,このような薬物に対する耐性の情報がある箘種から他の菌種へと伝搬されることが明らかとなり,抗生物質に代わる抗菌物質の必要性が高まってきている.このような抗生剤に対する耐性菌の出現は,細菌に限らず口腔内に存在するカンジダにもみられており,ここ最近,ポリエン系のアンホテリシンBやアズール系のフルコナゾールに対する耐性菌の出現が数多く報告されるようになっており,これに伴って,医科的に重篤なカンジダによる菌血症や播種性カンジダ症の増加が報告されている.このような各種薬剤に対する耐性菌の出現に伴い,従来の抗生剤あるいは抗真菌剤に代わる抗菌物質の必要性が,この最近非常に高まっており,特に,抗菌性だけでなく,これまでの抗真菌剤の大きな問題点であった副作用あるいは細胞毒性というものがなるべく小さい抗菌物質が望まれるようになっている.生物は外界の微生物に対して自らを防御するため,様々な防御機構を備えているが,その一つが抗菌性ペプチドであり,生物が本来,自ら産生しているものであるため,生体に対しての副作用あるいは為害作用は極めて小さく,抗生物質の代わり得るものとして大きな期待を集めている。 リゾチーム(LZ)は天然に存在する抗菌性蛋白質であり、ヒトの涙、人乳、唾液、喀痰、鼻汁などにも幅広く存在し、ムコ多糖類を加水分解する酵素である。生体内にあっては抗細菌、抗ウイルス作用、白血球の貪食能の増強作用、抗腫瘍作用、抗癌作用などの生体防御機構に関与する。LZは溶菌力と組織修復促進作用を有することから生体防御因子として重要な役割を果たしていることが注目され、医薬品剤として高いpotentialを持つと考えられている。細菌などに対する防御システムの役割を果たしているLZは、その存在下に同時にプロテアーゼを含んでいる。それらのプロテアーゼが殺菌作用の重要な関与因子になることがわかった。これを受けて、最近私たちは、in vitroにおいて卵白LZは、胃の中でペプシンによる分解を受け、多様な強い抗菌ペプチドを生成することが明らかになった。本研究の目的は、ヒトLZをターゲットとして、遺伝子組み換え技術を用いることで、様々な新規の抗菌ペプチドモチーフ(LZprmp)をクローニングし、酵母やピキアで発現させて調製し、それらのグラム陰性菌およびグラム陽性菌に対しての抗菌活性および抗感染機能を調べる。また、優れた抗菌ペプチドを有し、病原菌の培養細胞に対する接着や感染に及ぼす影響についても調べる。これらの抗菌ペプチドをシーズとした新規の医薬品剤としての開発。
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