研究概要 |
医療現場において従来の抗生物質に対する楽剤耐性菌の出現か大きな問題となっており、新規作用機作を持つ抗菌物質の開発は1つの大きな課題である。病原微生物に対する先天的な生体防御機構として、抗菌性ペプチドの存在がヒトを含むあらゆる生物において明らかとなってきております。リゾチーム(LZ)は天然に存在する抗菌性蛋白質であり、ヒトの涙、人乳、唾液、喀痰、鼻汁などにも幅広く存在しており、生体内にあっては抗細菌、抗癌作用などの生体防御機構に関与し、医薬品剤として高いpotentialを持つと考えられている。最近、我々は、卵白LZは、胃の中でペプシン消化による多様な強い抗菌ペプチドを生成することが明らかにした。しかし、実際にヒトの防御システムに関与しているヒトLZの抗菌性ペプチドについては全く明らかになってない。そこで、本研究では、まず、これらの抗菌生ペプチドがヒトLZにも存在するものかどうかを検証する。そして、遺伝子組み換え技術を用いることで、ヒトLZの抗菌ペプチドをクローニングし、ピキアで発現させて調製し、病原菌に対しての抗菌活性および抗感染機能を調べる。これらの抗菌ペプチドをシーズとした新規の医薬品剤としての開発。様々な遺伝子操作によって作られた組換えヒトLZの抗菌ペプチドによって、以下に述べる成果が得られた。 (1)導入ベクターとして、高発現プロモーターを有するベクターpPICZαBに5つの抗菌生ペプチドを連結したもの上流に分泌型のアルファファクターのシグナルペプチドを連結したものを構築した。 (2)ヒトLZのαドメーンから、5つのαヘリックスおよびβシート構造を持つ抗菌生ペプチドの遺伝子をピキアに導入し、発現が確認できたピキア及びその後代が多数得られた。 (3)MS/MSスペクトル法では、pPICZαB1-5のみ抗菌生ペプチドの発現が確認された。このことは、抗菌生ペプチドは細胞外に分泌させることにより発現を検出できた。 (4)5つの組み換え抗菌生ペプチドはグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して様々な強い抗菌作用を示したが、ヒトLZのN末端に存在してるヘリックスーループーヘリックス構造(HLH)の抗菌性ペプチドは非常に強い抗菌作用を示した。さらに膜バリアー能破壊作用において強い相乗効果があることがわかった。 以上の結果は、ヒトLZ由来の組み換え新規の抗菌ペプチドを有することで、病原菌の培養細胞に対する接着や感染に阻害機能を解明したことで、これらの抗菌ペプチドの組み合わせを追求し,また細菌選択的な相乗効果発揮の詳細なメカニズムがあることが,抗菌性ペプチドを用いたカクテル療法開発につながると期待される。
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