増加し続ける生活習慣病やがんの予防を目的として、厚生省(現厚生労働省)は平成12年に「健康日本21」を策定した。その中で「肥満者の減少」を目標の一つとして設定したが、その割合は年々増加を続けている。昨年までの研究で酢酸には脂肪合成に関わる遺伝子の転写を制御する因子ChREBPの転写活性を阻害する作用があり、酢酸摂取が余剰脂肪の合成と蓄積を抑制し、2型糖尿病を改善することを明らかにした。本年度の研究では、酢酸摂取がKK-A^Yマウスにおいても、余剰脂肪の合成と蓄積を抑制するか調べると共に、脂肪組織や筋肉における酢酸の効果について検討した。KK-A^Yマウスに酢酸を11週間投与すると腹腔内脂肪量は低下の傾向を示した。また血中TGおよびコレステロールも低下の傾向であった。酢酸を摂取した動物の脂肪細胞は肥大化が抑制されていた。そこで内蔵脂肪細胞および3T3-L1細胞を用いて酢酸の脂肪細胞に対する影響について調べた結果、酢酸を添加した脂肪細胞においては、脂肪滴肥大化が抑制される傾向があった。次にL6筋芽/筋管細胞を用いて酢酸の作用について検討した。分化誘導後酢酸およびAICARを培養液に添加し細胞内のAMPKのリン酸化について解析を行った結果、AMPKのリン酸化のレベルは酢酸の添加後増加していた。AMPKのリン酸化の程度は酢酸の濃度に依存して増加した。酢酸は筋管細胞に取り込まれた後、その代謝過程においてAMPを生成し、AMPKを活性化すると示唆された。またそれらの変化に伴う細胞内でのミオグロビンおよびGLUT4の発現量の変化を調べた結果、酢酸添加後それらの発現量の増加が認められた。これより酢酸は血中に取り込まれると筋肉に直接作用し、ミオグロビンの発現増加を介して脂肪代謝を促進することが示唆された。
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