| 研究概要 |
われわれが摂取する食品には,無数の抗原が含まれており,また病原性微生物が存在することもある。ここで自己と非自己の識別を行い,病原体の侵入を阻止して最前線のバリアとして機能しているのが腸管免疫システムである。このように腸管上皮は外部環境との接点として,体内最大とも言える免疫組織を形成している。食品の安全性への関心が高まっている現在,腸管上皮細胞のバリア機能の解明はきわめて重要な課題である。申請者は自然免疫における腸管上皮の役割を解明する目的で,これに関与しうる分子としてヒト腸管上皮モデルであるCaco-2細胞より新奇分泌型レクチン(RegIV)を見いだした。RegIVは,甲殻類の自然免疫に関わる抗菌性C型レクチンと高い相同性を有しており,ヒト腸管腔において抗菌性を発揮している可能性がある。
本年度においては,引き続きRegIVの生化学的特性の解析を行った。前年度構築した動物細胞発現系による組み換えタンパク質を用いて糖結合特異性を検討したところ,マンノース結合性を示唆する結果を得た。しかしながら,この系では得られるタンパク質が少なく,詳細な解析が困難であった。そこで前年度に構築した大腸菌発現系に改良を加えたところ,組み換えRegIVを可溶性タンパク質として大量に発現させること,さらにクロマトグラフィーにより精製RegIVを得ることに成功した。これを用いて糖結合特異性を検討したところ,RegIVがマンノース,マンナンへの結合性を有することを確認できた。このことから,RegIVは真菌などに存在するマンナンに結合することにより抗菌活性を発揮することが示唆された。次年度は,RegIVの微生物に対する抗菌活性を確認する計画である。
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