研究概要 |
レニンは血圧調節機構上重要な役割を担っている特異性の高いアスパルティックプロテアーゼであって、主に腎臓で合成されており、各種刺激で血管内に分泌され、血圧調節を行っている。レニンの内在性阻害タンパク質であるレニン結合タンパク質も、主に腎臓でその発現が確認されている。また、最近の研究からレニン結合タンパク質(RnBP)は、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)とN-アセチルマンノサミンとの相互変換を触媒するGlcNAc 2-エピメラーゼ活性を持つことが明らかとなっている。GlcNAc 2-エピメラーゼの活性発現には、ATPやADPなどのヌクレオチドの存在が必須であることや各種部位変異体の構築による解析などから、GlcNAc 2-エピメラーゼ分子の表面に存在する171番目の残基がヌクレオチド結合に関与することなどが示されている。本研究では、レニン阻害タンパク質との観点からRnBPとレニンとの相互作用に及ぼすATPなどヌクレオチドの影響についてその詳細を検討した。その結果、ATP非存在下では、RnBPが濃度依存的にレニン活性を強く阻害するのに対して、ATP存在下に:おいてはレニン活性の阻害が抑制されることを見出した。ATP以外にADP, dATP, dGTP, dCTPやdTTPでレニン活性阻害の抑制が認められた。次に、ATPがレニンとRnBPとの相互作用に及ぼす影響をGlcNAc 2-エピメラーゼ活性との関わりも含めて検討した。ATP非存在下ではレニンとRnBPとを反応するといわゆる高分子型レニンが形成されレニン活性が抑制された。しかしながら、ATP存在下ではレニンとRnBPとの結合が観察されなかった。また、ATP非存在下ではGlcNAc 2-エピメラーゼ活性はNEMで強く阻害されたが、ATP存在下でその阻害は抑制された。以上の解析などを総合した結果、ATP存在下では、RnBPの2量体が安定化することでレニンとRnBPとの複合体いわゆる高分子型レニンの形成が阻害されること示された。また、組換え型ヒトレニンの大腸菌での発現系を構築するとともに、巻き戻し条件や活性化条件を検討した。その結果、高濃度のアルギニンと界面活性剤の併用と段階的透析でヒトプロレニンの巻き戻しに成功した。巻き戻ったプロレニンは、トリプシン処理によって、レニン活性を発現した。得られた組換え型ヒトレニンを用い食材由来の阻害物質を探索した結果、味噌にレニン活性阻害物質が存在すること見出した。
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