研究概要 |
レニン・アンギオテンシン系はほ乳類で最も重要な血圧調節機構である。レニンは本系で律速酵素として重要な役割を担っている。本研究では、これまで入手が困難であったヒトレニンについて組換え型酵素の作出を目指した。また、煩雑であったレニン活性測定法の改良を行うべく新たな合成基質を開発した。すなわち、ヒトレニン活性測定用蛍光消光基質でN-methylanthranyl-Ile-His-Pro-Phe-His-Leu*Val-Ile-Thr-Lys-2,4 dinito-phenyl(Dnp)-[D-Arg]-[D-Arg]-NH_2(*,切断部位)を考案した。本基質を用いることでこれまで2日間を要していた活性測定時間を数時間に短縮することに成功した。組換え型酵素の生産については、大腸菌での発現系及びヨトウ蛾由来の昆虫細胞であるSpodopteral flugiperda(Sf-9)細胞株を用いる発現系を検討した。その結果、大腸菌で発現した場合には巻き戻し等の処理が必要であったが、Sf-9昆虫細胞においては、組換え型ヒトレニンは活性型として培養後期に培地中に分泌されることを見出した。また、ペプスタチンアフィニティーカラムを用いた簡便精製法を開発するとともに、酵素の諸性質を明らかとした。これら組換え型ヒトレニンを用い、小豆等の雑豆や野菜、山菜、海藻などの天然食材からレニン阻害物質を探索した。その結果、雑豆類やある種の山菜、海藻にヒトレニン活性阻害能を見出した。さらに、大豆由来レニン阻害物質に関しては、各種クロマトグラフィーを用いて精製を試みた。現在、構造解析を含めたより詳細な検討を進めている。
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