本研究の目的は、人工衛星や航空機センサデータから、森林資源の自動分類技術を開発することである。 18年度は、観測波長帯(バンド)が衛星と同様の4バンド(RGB、IR)を持つ高解像度センサから、信州大学演習林のヒノキ、スギ、アカマツ、カラマツの針葉樹人工林とミズナラ、ホホノキ、クリを主とする広葉樹林を対象に、以下の樹種分類技術の開発を行った。 1)立木本数の自動抽出では、樹冠の頂点は太陽光の影響を受けて明るくなるので、局所最大値フィルタリング手法を用いて樹冠頂点を抽出した。この手法は、樹冠の大きさとフィルタリングの大きさが等しい場合、精度が高くなった。これによって、画像に写る上層木の樹冠であれば、本数を自動カウントできる。 2)次に、森林内の個々の樹冠の周囲は太陽光が到達しずらいことから、暗くなる。この原理を用いて樹冠周囲を抽出するValley Following法によって、単木の樹冠抽出を自動で行った。今までの面的な解析から固体識別が可能になった。 3)単木の樹冠画像から、樹種ごとの反射特性を利用して最尤法により樹種区分を行い、樹冠区分図を作成した。森林内を単木レベルで樹種別の樹冠配置が分かることから、樹冠の大きさや混み具合から、間伐木の選定が可能である。また放置された人工林に侵入生育する広葉樹も分かることから、人工林の管理や生育状況を把握できる。 4)本手法を、2006年に打ち上げられた国産衛星ALOS(だいち)を用いて、信州大学構内演習林のユリノキ並木の樹冠抽出を試みた。樹冠が大きい樹木は区分することができた。 5)これら研究成果を、研究室の大学院に指導すると共に、「改訂森林リモートセンシング-基礎から応用まで-:加藤正人編著」にまとめ、大学の講義や森林技術者向けの標準テキストとして出版した。
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