日本には、野生動物保護管理の総合的管理に関するまとまった報告がない。そこで、昨年までのデータならびに総合的管理に関するこれまでの内外の研究成果をまとめ、総合的管理に関する現時点で考えら得れる指針についてまとめて報告書とすることを本年度の成果とした。病害虫対策など自然災害への対応として総合的対策が考えられており、それと比較しつつ野生動物保護管理における総合的管理の在り方を検討した。ここでは農林業被害への対応を中心としている。ニホンジカによるインパクトの評価には、これまで生息密度が用いられているが、被害への影響を考えるには利用密度を考慮すべきであり、糞塊加入量にもと利用密度を推定することの課題について明らかにした。 生息環境の影響を評価するため、人工林率が高い、森林簿から得られるデータを基に、シカが利用できる食物可能量を推定し、それをデジタル林班図を用いて表示した。また、5年生までの幼齢造林地における被害調査を行い、被害と被害を受けた幼齢造林地の周囲の食物環境との関連についてGISを用いて解析した。その結果、餌環境によって枝葉摂食被害を説明することはできなかった。樹皮剥皮被害のみ周囲200mの食物量と樹種(ヒノキ)が説明変数として採択された。 上記の情報などに被害防除コストおよび個体数捕獲のコストの情報を組み合わせて、生息環境管理、個体数管理、被害管理の組み合わせ方について考察し、これからの総合的管理に向けが指針について検討した。
|