研究課題
本研究では、植生遷移の進行に伴う森林生態系の機能的変化を「樹木の葉の被食防衛が分解者系に及ぼす影響」の側面から記述することを目的として、同一斜面上で横並びに隣接する極相にやや近い常緑広葉樹二次林(EBF)と途中相の落葉広葉樹二次林(DBF)を調査地とし、2つの林分間で、生産者、消費者、分解者の質と量(葉の被食防衛の程度を含む)、及び、分解速度と分解様式を比較するための調査を行い、以下の結果を得た。1.EBFの主要な生産者であるアカガシとDBFの主要な生産者であるコナラ、ヤマザクラ、アカシデの葉の質の経時変化を調べた。総フェノール濃度とタンニン濃度は、アカシデとヤマザクラでは展葉時から葉の成熟まで一定の値を示した。一方、コナラやアカガシでは展葉時の総フェノール濃度は前述の2樹種と同様であったのに対し、展葉後に急激な濃度の上昇を示し、秋頃に最大に達した。葉の硬さは展葉直後では樹種間の差は小さく、どの樹種も時間と共に緩やかに硬さを増したが、落葉樹3種では展葉終了を待たず6〜7週間後には増加が終了したのに対し、アカガシでは展葉終了後も増加を続け、6月末には落葉樹の3倍程度の硬さに達した。2.上記4種の葉における鱗翅目幼虫密度と葉の被食面積率及び、EBFとDBFにおける落下虫糞量の経時変化を調べた。鱗翅目幼虫の密度は4樹種のいずれにおいても5月から6月上旬の若葉の時期に顕著なピークに達した後、急激に減少し、7月以降は殆ど見られなくなった。被食面積の増加量を鱗翅目幼虫密度の高密度期(5〜6月)と低密度期(7〜8月)で比較すると、どの樹種でも低密度期の方が大きな値を示した。虫糞量も同じ傾向を示した。3.8月にスウィーピング法により各樹種の林冠昆虫の現存量を調べた。鱗翅目幼虫の現存量は小さく、直翅目、ナナフシ目、甲虫目など葉を摂食する可能性のある昆虫と捕食者であるクモの占める割合が相対的に高かった。
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