研究課題
1.目的本研究は同一立地条件下にある遷移途中相の落葉広葉樹林(DBF)と、より極相に近い常緑広葉樹林(EBF)の間で生産者、一次消費者、分解者の特徴を比較することにより、遷移段階の違い、樹木の葉の量的防御水準の違い、物質循環速度の違いの三者が密接につながっていることを示し、(1)遷移が進むに従って物質循環速度は低下する、(2)植物の行う被食防衛がこの現象の駆動力である、との仮説を検証することを目的として行った。2.方法と結果(1)葉の量的防御水準針入硬度計を用いてアカシデ、ヤマザクラ、コナラ(以上DBFの優占種)、アカガシ(EBFの優占種)の生葉の硬さを測定した結果、展葉直後、展葉40日後のいずれにおいても落葉樹3種<アカガシの有意な関係が得られた。また、タワーを利用して林冠の葉を接写した画像から求めた食葉性昆虫による被食面積率にはアカシデ>アカガシの有意な関係が見られ、ヤマザクラ、コナラは両者の中間であった。これらの結果はアカガシの量的防御水準が落葉樹3種に比べて高いことを示す。(2)葉の分解し易さリターバッグ法により重量減少速度を測定した結果、アカシデ>ヤマザクラ>コナラ>アカガシの関係が統計的に有意であった。また、CO_2アナライザーを用いてリターバッグ内のリターからのCO_2発生速度を測定した結果、リターが十分に湿っている時期にはアカシデ,ヤマザクラ>コナラ>アカガシ、ないし、アカシデ>アカガシの関係が有意であった。これらの結果はアカガシが落葉樹3種に比べ分解されにくいことを示す。(3)リター回転率(年リターフォール量)/(リター集積量)によりリター回転率を求めた結果、DBF>EBFであった。3.考察植物の生長と量的防御とはtrade offの関係にあり、生長の遅い種が優占する遷移後期の森林では、生長の速い種が優占する途中相の森林に比べて量的防御水準が高まる。その影響は生産者-一次消費者相互作用系に止まらず、落葉の質の違いを通じて分解者の活動にまで及び、森林生態系の物質循環速度を左右することになると考えられる。
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Journal of Tropical Ecology 25(in press)
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