(1) 森林性野ネズミの定住生息数の推定:厳冬期を除き、毎月1回4夜連続で生け捕りわなによる野ネズミの捕獲を行った。両種の個体数は、春にピークを迎え、夏から秋にかけて減少し、晩秋から冬の出産により増加することが明らかになった。アカネズミの個体数はドングリの生産量に大きく影響されていたが、ヒメネズミはアカネズミの影響も受けていることが明らかになった。アカネズミに小型発信機を装着し、行動範囲を推定したところ、標識再捕調査で推定した行動圏より広い範囲をこつ同域として持っていることが明らかになった。 (2) 種子の落下状況調査:林内に種子トラップを設置し、健全なドングリの落下数を推定した。総落下数はhaあたり11.9万個で、健全率は88.68%、健全ドングリの落下数は10.57万個と推定された。 (3) 種子の地上からの消失過程や野ネズミの種子の運搬・貯食行動の解明:林床の固定プロットに落下したドングリの消失とその原因を定期的に調査する。小型発信機を装着したドングリを野ネズミに運搬させ、それを追跡する。貯食されたドングリの回収と盗難については、発信機付きドングリの設置場所に赤外線センサースウィッチ付きカメラを設置し、運搬個体を特定する。その後、各ドングリが貯食された場所にもカメラを設置し、貯食されたドングリの回収者の特定を行う。ドングリを野ネズミによる貯食を同様のパターンで人工貯食し、それらの消失過程を追跡する。その結果、昨年度と同様地上に落下したドングリは、イノシシと野ネズミにより消失すること、野ネズミにより貯食されたドングリは、多くが貯食者に回収されるか他のネズミ個体による盗難により消費された。貯食者の自らが貯食したドングリの回収率は、約60%であった。 (4) 稚樹の発生と分散:以上の調査結果をもとに、平成20年度に生産されたドングリが稚樹となるまでの生命表を作成した。
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