研究概要 |
近年資源が激減しているヤツメウナギの遡上に及ぼすダムの影響を評価するため,石狩川支流においてダムの形態とヤツメウナギの種類について調査を行った.ダムの落差が1m以上ある河川では下流にはカワヤツメの幼生が多く生息しているにもかかわらず,上流ではスナヤツメの幼生しか観察されない場合が多くみられ,遡上を決定づけるダム落差は0.5m以上1m以下であると推測された.次にダム構造物の切り下げによる修復工事が,渓流生態系に及ぼす影響について調査を行った.ダム切り下げが行われる以前にはダム上下流において礫洗掘による基岩の露出と細粒砂の堆積が顕著にみられた.ダムを切り下げた結果,礫構成が多様になり,とくに小〜中礫が幅広く出現した.またダムが落葉分解に及ぼす影響に関して,ダムにおける落葉の分解実験とそれに付随した飼育実験を行った.実験の結果,渓流に移動したダムの落葉は,ダム内の落葉に比べると分解は速く進行したが,ダムに堆積していない渓流の落葉と比較すると遅かった.落葉に定着した底生動物の種組成は,ダムの落葉と渓流の落葉で異なった.ダムではユスリカ科が多く出現したのに対し,渓流では破砕食者のタキヨコエビが多く出現した.出現個体数は,ダムの落葉のほうが渓流の落葉よりも少なかった.リターバッグを設置した地点の溶存酸素量はダムが渓流の約1/9であった.ダム内では溶存酸素量と葉に定着した破砕食者の少なさが,渓流と比較したときの56日後の破砕量の少なさに結びついていると考えられた.さらにサケ科魚類の遡上はかる河川再生の事例として,アメリカ西海岸,カリフォルニア州の北部を訪れ,NOAAとCalifornia Fish and Wildlife, California Coastal Consevancyなどが行っているFish Passage Projectとダム撤去に関する情報収集を行った.
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