2005年、2006年にスリット化された留萌管内の渓流において河川地形変化と土砂流出について調査を行った.スリット工事はダム中央部の幅3m、高さ2m程度を台形に切り下げるもので、下流部には落差を解消するため直径0.5〜1m程度の現地産出の大礫を扇形に配置し、上流から流下してくる砂礫を埋積することでスムーズな河床を形成させることを目的とした。礫径の分布状況は、ダムの未スリット化区間とスリット施工区間で、礫径組成に著しい違いがあった.未スリット化区間は、砂や泥、1〜15cm未満の小礫が集中する傾向がみられ、一方スリット化実施区間では、礫径は変動幅が大きく多様性があることが明らかになった.多様な礫径の存在は、スリットにより上流部からの礫移動がスムーズに行われた結果であると考えられる.上流からの多様な礫径が流下することにより、河川に自然的な蛇行が生じ、河川流路の多様性が生じていた.ダム切り下げによる地形的な影響は流路周辺に留まっており、渓岸の安定性を損なわないとみられる. また後志管内尻別川において、ダム構造物がサクラマス親魚の遡上に及ぼす影響について調査を行った.ダム構造物直下のプールの有無に着目し、構造物直下の水深が30cm以下の場合とこれ以上の場合に分け、堤高と遡上率との相関を取り、線形近似曲線からそれぞれの遡上限界を解析した.この結果、ダム下流部にプールが存在する場合の遡上限界は1.8mであるに対し、プールのない場合は1.5mに低下し、遡上限界に30cm程度の差が認められた.このことから.構造物下流部にプールが存在する事で、サクラマスの遡上率が向上することが明らかになった.
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