1.研究の目的 研究対象地における自然・社会要因に応じて松枯れ後の植生がどのように変化してきたのか、また広葉樹がどのような経過を経て進入・定着するのかという植生遷移の方向を明らかにすることで、(1)防砂機能の高い海岸林の在り様(2)保健機能の高い海岸林の在り様を明らかにすることである。 2.平成18年度の研究実施計画に基づく成果 (1)資料収集・解析 遠州灘地域における人工砂丘及び海岸林造成の歴史をレビューするための資料収集を行い、対象地の林相図、植林履歴図、松枯れ被害度図を作成した。その結果、対象地では1927年一1946年に植栽された(林齢60〜80年)面積が最も多く、風衝面と風背面で松枯れ被害に違いはなかったが、風衝面よりも風背面のほうが広葉樹林化が進行していることが明らかとなった。 (2)現地調査 遠州灘海岸林の35地点で植生調査、代表的な3地点で毎木調査、広葉樹が最も発達した群落内の35本について年輪解析を行った。植生調査の結果114種の高等植物が確認され、海岸性木本と内陸性木本、種子の散布様式の特性を明らかにできた。また、植生解析の結果、成立する群落は6つのタイプに区分され、更にDCA法による序列化や年輪解析の結果から、松枯れ被害と広葉樹の進入に伴う6つの群落型における植生遷移のプロセスを推定することができた。また、社会科学的調査として、対象地に居住する住民を対象としてアンケート調査を実施した。その結果、対象地近傍に居住する住民が海岸林に求める機能や役割、松枯れ後に求める海岸林の林相など貴重な住民意向を確認することができた。 一方、湘南海岸の海岸林19地点で毎木調査を行い、成立している海岸林を3つのタイプに区分することができた。海岸林は管理年度の違いよりも、その区画における高木種の有無と密度が林分構造に大きく影響していることを明らかにした。 3.今後の研究の展開 遠州灘及び湘南海岸地域の海岸林を対象とした土壌の発達状況の把握、風環境の調査、広葉樹の進入過程と種子散布実態調査、地元住民との現地検討会などを通して、松枯れ後の海岸林の植生変化と将来の樹林目標を考える。
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