1.研究の目的 松枯れ後の海岸林内の植生がどのように変化してきたのか、また広葉樹がどのような経過を経て侵入・定着するのかという植生遷移の方向を明らかにすることで、防災機能や保健機能の高い海岸林のあり様を明らかにする。 2.平成18-19年度の研究実施計画に基づく成果 (1)現地調査1(遠州灘) 資料解析から、林相図、植林履歴図、マツ枯れ被害度図を作成した。海岸林35地点で植生調査・毎木調査を行い、6タイプの群落区分と序列化に伴う植生遷移のプロセスを推定した。また、住民意識アンケートを行い、将来の林相について貴重な住民意向を確認できた。人工斜砂丘を対象として、光環境、土壌水分、土壌のpHなどについて調査した結果、立地条件や種組成にも特長があることがわかった。 (2)現地調査2(湘南海岸) 海岸林19地点で毎木調査を行い、3タイプの群落に区分でき、管理年度よりも高木種の有無と密度が林分構造に影響していることがわかった。沿岸住宅地の庭木や街路樹に付着している塩分を指標として、飛塩量分布図を作成した結果、海岸林が途切れる場所において飛来塩分量の増加が認められた。住宅や道路が分布を複雑にしていることも示唆された。また、海岸林管理後の年数による林分構造を明らかにするために調査を行った結果、林冠を構成する種に萌芽由来の個体が多く、それらの成長は実生由来のものよりも早かった。その結果から、研究対象地の海岸林が主に萌芽更新に基づいて成立している実態を明らかにすることができた。 (3)日本海岸林学会での発表 平成19年11月23日から25日にかけて開催された日本海岸林学会静岡大会において、3編の口頭発表、3編のボスター発表を行った。
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