研究概要 |
ササ属は「一回結実性」とされ,数十年に一度、一斉開花して枯死する現象が報告されている。一方,ごく小面積でパッチ状に部分開花した例も報告されており、開花メカニズムについては、生物学的に未解明なままである。また、ササ属の特徴である地下茎による栄養繁殖の範囲や動態に関しても,研究手法上の制約から未だ明らかになっていない。本研究では,栄養繁殖系つまり個体としての広がりを明らかにするために必要となる個体識別のための遺伝マーカーを開発し、連続して部分開花が観察されているササ群落を対象に,シュート単位の個体性を調べ(クローン分析),開花単位の遺伝構造を明らかにすることを目的とする。 前年度に開発されたマーカーを使用して、固定プロット内に生育する全シュートのサンプルを多型解析(クローン分析)した結果、複数クローンが同調して開花しているかが明らかになった。一方,同一クローンでも開花している桿と開花していない桿が混在している事実も明らかになった. また,開花桿のバイオマスは未開花桿のバイオマスより大きいことが前年までの研究から明らかになっている。これらの結果を総合的に解析し、ササ属の一斉あるいは部分開花から枯死にいたる現象は、遺伝性に支配された個体単位で決まっているのではなく、シュートサイズ、クローンのバイオマスなどの物質生産的な要因も無関係ではないことが示唆された。
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