研究概要 |
野生イノシシ肉利用を拡大するための知見として、ロース肉の一般成分、α-トコフェロールおよび色調、モモ肉のα-トコフェロール、皮下脂肪の厚さおよび脂肪酸組成について捕獲時期と性別での影響を調査した。ロース肉において水分含量と粗脂肪含量は11月から2月(狩猟期)に高く(P<0.05),粗タンパク質含量は3月から10月(非狩猟期)に高かった(P<0.01)。また、粗脂肪含量はいずれの時期、性でも1%以下で家畜肉と比較して低いものであった。α-トコフェロール含量は非狩猟期(P<0.01)ならびに雄(P<0.05)で高かった。イノシシ肉色調は光ファイバによる分光での調査では暗赤色〜濃赤色となった。表面色調は切断24時間後で酸化の影響が認められた。皮下脂肪厚は狩猟期で厚かった(P<0.01)。皮下脂肪の飽和脂肪酸割合は非狩猟期で高く(P<0.05)、オレイン酸割合および一価不飽和脂肪酸割合(オレイン酸を含む)は狩猟期で高かった(P<0.01)。肉におけるこれらの成分の違いは餌や生息環境に起因するものと考えられた。一方、狩猟や有害鳥獣捕獲で捕獲された野生鳥獣肉の料理店側における利用状況を把握するために、web上で検索・選出した料理店に対してアンケート調査を実施した。利用野生鳥獣肉は、輸入鴨や国産鹿が中心で、料理店側の美味しさを伝えたい対象ともなっていた。また、客のジビエ料理に対する反応は「満足」と考える店が多かった。一方で、利用に当たり「品質」、「安全性」に対する不安、野生獣肉の高価格による使用しにくさがあることも認められた。今後の野生鳥獣肉の利用拡大に向けてはこれらの点を考慮,改善する方向の検討が必要であることが判った。
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