本断熱材の熱伝導率は0.055W/mK程度であり、高性能グラスウールの約1.6倍であるが、温度非定常下での保温性の指標となる熱拡散率は0.4mm^2/s程度であり、グラスウールの値の約半分となる。したがって、両断熱材が同一の熱抵抗で住宅に施工された場合、木質特有の蓄熱性に起因する保温効果が期待できる。これを検証するため、小型の実験住宅(平屋建:18m^2)を用いて外気温の変動に対する室内気温の変化を調べた結果、夏季冷房時および冬季暖房時の両方において、グラスウールによる断熱施工よりも保温効果に優れることが認められた。また、暖房に必要なエネルギーもほぼ同等であることが分かった。さらに、厳冬季に本断熱材の両表面温度差が20℃となる条件(一方の表面は0℃程度)で内部結露の有無を調べた結果、結露発生は認められなかった。 また、昨年度は本断熱材の防火性能に関して小型試験体による燃焼挙動を調べたが、本年度は実大厚さの断熱材を充填したモデノ壁体(木造軸組壁で外壁材は厚さ12mm木片セメント板、内装下地は厚さ9mm石膏ボード:寸法は1.2m×1.2m)を用い、ISO-834の加熱曲線に基づく耐火試験を行った。その結果、本断熱材は小片の燃焼で発生した水蒸気が断熱材内部で飽和状態を継続し、加熱による供給エネルギーが水分の蒸発潜熱に消費されるため、断熱材非加熱側の温度上昇の長期停滞が認められ、グラスウール充填壁よりも高い遮熱性を有することが実大レベルで確認された。さらに、本断熱材はグラスウールと比較して耐火試験後の収縮変形が少なく、柱材の断面欠損が抑制されることも明らかとなった。すなわち、構造安全性の観点でも優位性が示された。また、遮熱性の観点からは、少なくとも準耐火構造相当の性能が期待できるが、今後は載荷条件での耐火試験により構造安全性に関する更なる検討が必要であろう。
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