研究課題/領域番号 |
18580163
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河本 晴雄 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (80224864)
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研究分担者 |
坂 志朗 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (50205697)
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キーワード | バイオマス / 熱分解 / 分子機構 / リグニン / セルロース / 炭化 / 相互作用 / ガス化 |
研究概要 |
平成19年は、主に下記の3項目について検討し、成果が得られた。 1)リグニンの熱分解におけるラジカル連鎖機構 これまでの研究で、リグニンの熱分解においてラジカル連鎖機構が重要な役割を果たしていることが示唆されている。そこで、ラジカル連鎖が進行する条件下としない条件下で、リグニン2量体モデル化合物からの生成物を詳細に検討した結果、(1)フェノール性水酸基からのH引き抜きによる経路と、(2)Cα-Hの引き抜きによる機構が存在することが明らかになった。 2)リグニン炭化の分子機構 16種のリグニン関連物質を加熱処理した実験より、リグニン芳香環中のメトキシル基の存在がリグニンの炭化において重要であることがわかった。また、グアイアコール中のメトキシル基をエトキシル基に置換した化合物では、炭化物の代わりにベンゾフラン類が生成することがわかった。これらの結果と詳細な生成物解析の結果より、メトキシル基のラジカル転移により生成する"0-キノンメチド"を、リグニンの炭化におけるキー中間体として提案した。 3)ガス化におけるリグニンの役割とその分子機構 ガス化においては、まず、木材成分が熱分解することで一次生成物(揮発成分と炭化物)を与え、それらがそれぞれ二次分解を受けることでガスを含む最終生成物へと変換される。一次熱分解挙動については、既に詳しく調べており、本年度は、二次分解に着目した研究を行った。まず、揮発成分、炭化物のガス化に対する反応性を明らかにした。その結果、リグニン由来の揮発成分のガス化に対する反応性はそれ程高くないが、メトキシル基のホモリシス(ラジカル種を生成)が進行する時点で、リグニンのガス化(特にメタン生成)が著しく促進されることがわかった。また、メトキシル基のホモリシスにより、多糖由来成分の気相でのガス化が促進されることもわかり、その分子機構として、リグニン由来のラジカル種によるH引き抜きによるラジカル機構が提案された。 以上述べてきたように、リグニンに着目した木質バイオマスの熱分解およびガス化の分子機構について多くの成果が得られた。従来、木質バイオマスの熱分解、ガス化はブラックボックスとして取り扱われてきていたが、これらの成果は、熱化学変換技術の問題点(例えば、タールトラブルや低選択性の問題)を解決、あるいは効率的なプロセスを設計する上で、非常に重要な示唆を与えるものである。
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