主に、以下の2点について研究を行い、成果を得た。 (1)部分構造に着目した、リグニン熱分解における高分子化、低分子化、炭化物生成機構の解明 リグニンはフェニルプロパン単位が種々のエーテル型(C-O-C)および縮合型(C-C)結合で結合した高分子芳香族化合物であり、これらの部分構造の熱分解挙動(機構)を理解することはリグニンの熱分解機構の解明に必須である。このような観点から、種々の部分構造を代表する2量体モデル化合物と木材より単離した高分子リグニンとあわせて用いることで、各部分構造についての熱分解反応機構の詳細を明らかにするとともに、木材リグニンからの高分子化、低分子化および炭化物生成における役割を明らかにした。また、低分子化生成物を与えるキー反応であるエーテル開裂機構(ホモリシスvs.ヘテロリシス)、およびラジカル連鎖機構を明らかにした。さらに、リグニン中のベンゼン環構造が炭化物(ポリアロマティック構造)へと変化する過程(炭化)について、その分子機構を提案した。これらの成果は、木材リグニンの熱分解反応を制御する上で重要な示唆を与え、生成物制御に繋がる重要な成果である。 (2)ガス化におけるリグニン熱分解の役割とその分子機構 ガス化は、600℃以上の高温度域で行われる熱化学変換プロセスである。このようなガス化においても、木材の熱分解は重要な役割を果たす。すなわち、まず、熱分解により生成する揮発性生成物と炭化物がその後二次分解することで、ガス化が進行する。ここでは、このような高温度域でのリグニンの一次熱分解および一次熱分解生成物のガス化機構を(1)で得られた成果を基に、解明した。これにより、ガス化における生成物制御(例えば、タール生成の抑制など)を可能にする重要な成果が得られた。
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