研究概要 |
毒きのこの中毒が疑われる患者が発生した場合、迅速に適切な治療をする必要があるが、そのためには原因となるきのこを正確に同定することが重要である。しかし、中毒が起こった時には、きのこは調理された後で、同定するのに十分な形態を保持していないことが多い。そこで、きのこが欠片しかない場合や、専門的な知識がない人でも中毒の原因となるきのこを正確に同定する方法が求められており、本研究ではDNA技術を使って種を同定する方法の開発を目的とした。本研究は、まず日本の毒きのこによる食中毒の原因となるきのこと、それに形態のよく似た食用きのこ19種の菌糸体または子実体を集め、そして、DNA配列の収集を行った。まず調理したきのこからPCR反応に十分なDNAが抽出可能かどうかを調べた。"焼き","炒め","揚げ","茹で"の調理したきのこからDNAを抽出し、得られたDNAの大きさなどをアガロース電気泳動により調べた。その結果、"焼き","炒め","揚げ"の調理をしたものでは、未調理と比べDNAはやや分解していたが、20kbp程度のサイズの大きなDNAが確認できたものもあり、また小さい場合でも、5kbp程度の大きさのDNAが確認できた。一方、"茹で"の調理をしたものは"焼き"、"炒め"や"揚げ"の調理をしたものよりもDNAの断片化が激しかったが、それでも500bp以上のDNAが電気泳動によって確認できた。次にこれらのDNAを用いてPCRを行い、DNAが増幅するかどうかを調べた。その結果、どの調理をしたきのこから抽出したDNAを鋳型にしても、PCR法によりDNA断片の増幅を確認することができた。以上のことから、増幅産物の遺伝子の塩基配列シークエンスを決定し、DNAデータベースと相同性検索することで、種の同定が可能であると考えられる。
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