研究概要 |
1.マングローブ樹種の抗菌活性 木材腐朽菌のカワラタケ、オオウズラタケに対するオヒルギ、樹皮、幹、葉、根メタノール抽出部、ヤエヤマヒルギ、マヤプシキ根メタノール抽出部の阻害活性はオヒルギ幹、葉メタノール抽出物で阻害率100であった。オオウズラタケ、他のメタノール抽出物は阻害活性はほとんど見られなかった。阻害活性の大きいオヒルギ幹メタノール抽出物の阻害活性は水可溶部、酢酸エチル可溶部移行した。酢酸エチル画分をカラムクロマトグラフィーで会画すると、活性はフラクション1,2に見られた。TLCの呈色反応からフラクション1,2の構成物質はカテキン類と推定した。 2.マングローブ樹種からの抗酸化物質 オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギ樹皮のメタノール抽出物についてDPPH(1,1-diphenyl-2-pycrylhydrazyl)ラジカル消去活性を測定した。DPPHラジカル消去活性はオヒルギ、ヤエヤマヒルギ、マヤプシキとも根より樹皮に強く認められ、ヤエヤマヒルギの樹皮は5μg/ml,10μg/mlでEGCGに匹敵するほど強い活性を示した。このことからヤエヤマヒルギ樹皮の活性物質について検討した。メタノール抽出物を液・液分配により酢酸エチル可溶部、n-ブタノール可溶部、水可溶部に分画した。ラジカル消去活性の高い酢酸エチル画分を種々のカラムクロマトグラフフィーの組み合わせによりラジカル消去活性物質を分離した。この物質はNMR、ESI-MSからカテキンを基本骨格とするフェニルプロパノイド誘導体であると推定した。 3.マングローブ樹種の抗腫瘍活性 ヤエヤマヒルギ樹皮メタノール抽出物を水に溶解し、酢酸エチル画分、水可溶部をメタノール:水画分、アセトン:水画分に分画した。7周齢雄ICRマウスにSarcoma-180腫瘍細胞を接種した担癌マウスを作成し、分画した4つの試料(試料濃度10mg/ml、30mg/ml)を7日目より1目おきに42日間腹腔内に投与し生存率、腫瘍細胞増殖、臓器への影響を検討した。担癌動物の生存率は処理区間で差は見られなかった。腫瘍面積はコントロール群に比較して各処理図とも小さくなる傾向を示し、その中でも酢酸エチル画分での処理が最も小さかった。また、血清中のサイトカイン(IL-12)は酢酸エチル画分で免疫賦活剤のピシバニールと近い値を示し、宿主の免疫機能を亢進する可能性が示唆された。
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