まず、垂下式養殖ホタテガイの食物供給機構については、そのメカニズムをほぼ明らかに出来た。植物プランクトンの細胞密度の高低により、摂取している食物の内容が変化しており、植物プランクトンの大増殖期には、浮遊性の微細藻類を多く摂食するが、そのほかの季節は付着珪藻への依存度が高い。陸奥湾の場合、女川湾に比較すると1年を通して植物プランクトン濃度が低く推移しており、付着珪藻への依存度が高い。女川湾でも春季、秋季のブルーム期以外は付着珪藻への依存度が高くなる。 次に、漁場の基礎生産力を推定するための光合成の測定を行なった結果の概要を示す。ホタテガイ漁場の内外から採集した海水サンプルと、付着基質から採集した珪藻サンプルについて、現場の水温条件のもとで、光条件だけを数段階に区別して、C13でラベルした炭酸塩を添加することにより、光合成量を測定した。 海水中の植物プランクトンは、光量の強さに応じて光合成活性が高くなった。これに対して付着珪藻の場合には、光量の強さには比例しなかった。また季節的な変化についてみると、浮遊珪藻では非常に大きな季節変化が見られるのに対し、付着珪藻の光合成速度の季節変化は小さ、安定していることが分った。すなわち、浮遊珪藻と付着珪藻とでは、増殖の生理機構が異なることが示唆された。
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