研究課題
ホタテガイの生産力を支えているのは、植物プランクトンと付着珪藻であり、養殖漁場においてはこの二者が基礎生産を担う両輪であることが明らかになってきた。特に付着珪藻の生産力は植物プランクトンに比べると、安定的で常に多様な種類が存在できるメカニズムが明らかになってきた。ホタテガイの生産における鉛直構造との関係でみると、海面近くと海底近くのホタテガイに対する、付着珪藻が果たす役割はほぼ同程度であることが分かってきた。また、ホタテガイ漁場での付着生物の果たす役割が小さくないことも明らかになってきた。ホタテガイ殻表面の付着生物の活動によって、付着珪藻がホタテガイの外套腔内に入り込めるしくみを補助している可能性が、飼育実験により、明らかにされた。ヨコエビやワレカラなどの小型甲殻類などは、付着珪藻を食物としているので、ホタテガイと食物をめぐる競争があると予測されるが、これらが活動することにより、付着珪藻の剥離を促し、それがホタテガイに取り込まれていくと推察された。すなわち、狭い空間構造のなかに生物同士の繋がりがあり、競争と協力的関係が存在しているという、生態学的にも興味深い現象を捉えることが出来た。つまり、ホタテガイ養殖のしくみの根幹部分は、じつは自然の生産系、生物群集の繋がりであり、その基礎生産者の大半は付着珪藻であることが実証された。
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沿岸海洋研究 47(印刷中)
月刊海洋 462
ページ: 184-192
Coastal and Shelf Science 80
ページ: 243-250