ゲノム配列情報の農学的利用が近年盛んに試みられており、主要な穀類や家畜類のゲノム配列が解読された。一方で水産学に目を向けると、我が国の養殖対象魚類は多岐にわたることから、そのすべてにおいてゲノム配列解読を進めることは現実的ではない。ブリ類など主要養殖魚のゲノム構造を比較ゲノム法で推定するため、本研究では、トラフグと他のモデル魚類のゲノム構造を全ゲノムレベルで詳細に比較することを目指した。 ○トラフグ連鎖地図に貼り付けられたゲノム配列長は合計337.1Mbとなり、全ゲノムの86%に達した。さらに、全ゲノムの72%の配列の染色体上の方向を決定できた。このゲノム地図の質(ゲノムを覆う比率)は、魚類中、メダカに次いで2番目のものとなった。 ○トラフグ全ゲノムの86%の配列を利用して、ミドリフグおよびメダカのシンテニーと比較したところ、驚くほどシンテニーが類似していることが明らかとなった。これらの魚類の祖先魚は、24本のハプロイド染色体を持ち、現在の魚種に至る過程で大規模な再編成が生じたのはわずか数本の染色体のみであることが分かった。 ○フグとメダカでジーンオーダーが保存されたゲノム領域を網羅的に同定した。ブリ類やマダイなど棘鰭上目に属する魚類でも、これらのゲノム領域は保存されている可能性が高いと予想された。 以上の研究から、トラフグ、ミドリフグ、メダカのゲノムを比較することで、ブリ類やマダイなどのゲノム構造を精度高く推定することが明らかとなった。
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