研究概要 |
時空間的に環境の変化が激しい沿岸・内湾を生息場としている植物プランクトンの中には,生活史の一時期に休眠して不適な環境を海底上で生残するステージ(以下,"休眠期細胞"と呼ぶ)を持つ種が多く知られている.休眠期細胞は栄養細胞増殖の種(たね)としての役割を果たすため,そういった種の生態を解明するためには,プランクトン群を構成する栄養細胞の季節消長だけでなく,海底に存在する休眠期細胞の発芽動態に関する研究が必要である.本研究では,典型的な内湾域である三重県英虞湾をモデル海域として同湾における植物プランクトンの現場海底からの発芽を季節的に追跡し,同時に栄養細胞の季節消長を調べることによって,様々な種における個体群形成機構ならびに生態戦略を明らかにすることを目指す. 平成18年度においては,上記の研究目的のため,まず英虞湾内に一定点を設けた.その定点において,以前開発した「プランクトン発生捕捉チャンバー」を用いた海底からの発芽細胞の実測調査を行うとともに,水柱中にプランクトン群として出現する栄養細胞の現存量を季節的に調べた.また同時に,水温・塩分や水中光強度,栄養塩といった物理化学的環境要因を測定した.調査頻度は毎月1回であった.発芽調査を行った結果,これまでに珪藻類(9属14種)や渦鞭毛藻類(2属2種)の海底からの発芽を捉えることに成功している.現在も,検鏡中であるので今後これらの種数はさらに増加する可能性がある.来年度は,平成18年度に得られたサンプルの観察と解析を進めるとともに,さらに同様の調査を継続する.これらの調査・研究により,今後,様々な植物プランクトンの休眠期細胞の発芽挙動と栄養細胞の季節的消長,さらには両者(発芽と栄養細胞)の数的関係を明らかにしてゆく予定である.
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